京都の妖怪ストリートをゆる歩き

まち歩き

ある人が「妖怪がたくさんいる商店街がある」と教えてくれました。写真を見せてもらうと、商店街のあちこちに妖怪(の等身大の人形)の姿が。ここでは妖怪ををテーマに街おこしをしているとのこと。手作り感のある妖怪が出没する、ちょっとシュールな風景が気になり、実際にこの目で確かめてきました。

百鬼夜行の舞台が妖怪ストリートに

妖怪で街おこしをしている商店街とは、京都一条通にある大将軍(たいしょうぐん)商店街です。

なぜ大将軍商店街が妖怪で街おこしをしているのか?それは一条通が「百鬼夜行」の舞台だからです。

「百鬼夜行」の物語は「付喪神(つくもがみ)絵巻」という室町時代の絵巻物に描かれています。

平安時代の10世紀後半、100年使われた古道具には魂が宿り、付喪神になると信じられていました。人の心を惑わすとされた付喪神を恐れた人々は、「煤払い」と呼ばれる年末の大掃除で古道具を捨てていました。

ある時、「煤払い」で捨てられた古道具たちが、節分の夜に造化の神の力で付喪神(つくもがみ)という妖怪に化けて都の北西に住みつき、都に出ては人を襲うなどして捨てられた恨みを晴らしました。

そして付喪神たちは、自分たちを妖怪にしてくれた神様を「変化大明神」として祀り、祭礼として一条通を練り歩きます。この付喪神たちの行列が「百鬼夜行」です。

挿絵とあらすじで楽しむお伽草子 第5話 付喪神(つくもがみ) | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ

「付喪神絵巻」の百鬼夜行の舞台となった一条通にある大将軍商店街では、2010年代から「妖怪ストリート」としての街おこしに取り組んでいます。この記事の冒頭で述べた妖怪の人形の設置のほか、百鬼夜行をモチーフとした仮装行列のイベントも毎年行われています。

大将軍商店街について | 大将軍商店街振興組合 一条妖怪ストリート
大将軍商店街振興組合 理事長ごあいさつ 大将軍商店街振興組合理事長 井上 明 (お食事処 いのうえ) 京都市の北に位置し、西大路通から中立売通までおよそ400mの長さに渡って商店が並ぶ「一条妖怪ストリート」こと大将軍商店街は、市内北西部の商...

百鬼夜行と宝塚歌劇の「応天の門」

街歩きと歌劇を楽しむ当ブログ。百鬼夜行といえば、宝塚歌劇月組で2023年2月~4月に上演された「応天の門」が思い出されます。

「応天の門」は、学問の神様として有名な菅原道真を主人公とする、灰原薬原作の同名マンガを舞台化したものです。舞台では、都の人々を恐れさせる百鬼夜行の謎解きを軸として、道真たちの活躍が描かれていました。

さらに百鬼夜行の妖怪=付喪神といえば、これまた宝塚歌劇月組の2023年8月~11月に上演されたショー「万華鏡百景色」(ばんかきょうひゃくげしき)にも、ストーリーテラー的な存在として付喪神が出てきました(この作品の舞台は江戸~東京です)。2023年の月組は不思議と付喪神と縁が深かったんですね。

妖怪ストリートの近くには「応天の門」の主人公、菅原道真を祀る北野天満宮もあります。宝塚ファン、月組ファンの方はふたつ合せて訪れてみてはいかがでしょうか?

妖怪ストリートを歩く

妖怪ストリートこと大将軍商店街を歩いてみましょう。下の地図は嵐電の北野白梅町からのルートです。

嵐電の北野白梅町に近い西大路一条の交差点から大将軍商店街に入って行きます。

一条橋を渡ったあたりから店先に妖怪が現われます。

開いていませんでしたが、花屋さんの店頭の妖怪。滋賀県名物「飛び出し坊や」や、カラーコーンが利用されています。

商店街の中にはお寺や神社もありました。

大将軍八神社

こちらは大将軍八神社(だいしょうぐんはちじんじゃ)。平安京建設時に、天皇の在所である大内裏(だいだいり)の北西角に方除けの守護神として大将軍神を祀ったのが始まりです。北野天満宮からも近い界隈ですが観光客の姿は少なく、主に地元の人が参拝に訪れている様子でした。

大将軍八神社│方除・厄除の大将軍神
方除・厄除の大将軍八神社。当社は延暦十三年(七九四年)平安京遷都の際、桓武天皇の勅願によって、奈良春日山麓より大将軍神を平安京大内裏の北西角(陰陽道の天門)の地に勧請し、国家守護、国民の繁栄を祈念したのが始まりです。

大将軍八神社を過ぎると天神通と交差する四つ辻に出ます。ここには妖怪ストリート気分を盛り上げる八幡屋というお店があります。

妖怪の影がちらほらと。行きがけは閉まっていましたが、帰りがけには開いていました。

妖怪にちなんだグッズを扱うお店なのですが、店内は怪しげなモノが所狭しと並んでいました。

さらに東に歩いて行くと、店先で様々な妖怪と出会うことができます。これらの妖怪は近くの芸術大学の学生さんたちの手によるそうです。

薬屋さん

キョロキョロしていると見逃すこともあるので、個人的には往復しながら丹念に探すのが良いと感じました。

和菓子屋さん

妖怪さんをきっかけにお店の人と会話できるのが、とても新鮮です。

パン屋さん

基本的には地元向けの商店街なので、食品のお店では午後遅くになると商品が少ない場合があるようです。

観賞魚のお店

人形だけではなく立体看板もあるので、上にも目を向けてみてください。

観賞魚のお店の看板

妖怪ビルヂング

天神通との四つ辻を少し南に行くと百鬼夜行資料館「妖怪ビルヂング」があります。

妖怪ビルヂング入り口

2階は付喪神と百鬼夜行についての解説、妖怪のふすま絵、そして古道具の展示(付喪神へ育成中だそう)があります。

3階は「モノノケの部屋」で、不気味な妖怪たちが集っています。

人間サイズの妖怪の中身はマネキンのようです(妖怪の腕の部分に片鱗が見られます)。部屋の片隅に押し込まれた未使用のマネキンが不気味です。

じっくり観察すると手作り感が楽しい「モノノケの部屋」ですが、妖怪たちにかなり存在感があるので、お化け屋敷的なものが苦手な方には向かないと思いました。怪しいモノが好きな方にはおすすめです!

まとめ:妖怪のゆるさが魅力の商店街

妖怪ストリートとして知られる大将軍商店街は、意外にも地元の住民を主な客層とした昭和の香りが残る商店街でした。

そんな素朴な商店街に手作りの妖怪さんがまざる「絶妙なゆるさ」が、この街の魅力になっています。さらに妖怪関係の雑貨屋や百鬼夜行資料館という濃いスポットも楽しめます。

他にはなかなか見られない、独特な雰囲気を味わいに、妖怪ストリートを訪ねてみるのはいかがでしょうか?

一条橋近くのレストラン。これも妖怪?
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